鉄輪井


街なかの、知らなければ通り過ぎてしまいそうな路地の奥に、
おどろおどろしい伝説の残る鉄輪(かなわ)の井がある。

謡曲「鉄輪」では、元夫を恨んで貴船神社に牛の刻詣りをする女が、
三つの脚に灯をともした鉄輪を頭に載せ鬼女となり元夫を襲うが、
陰陽師安倍晴明の祈祷により追い返される。
この場所は、その女が住んでいたところとも、身投げしたところとも言われている。


伝説とは言え、そんな恐ろしいところに軒を連ねて家が建っていて、人が住んでいるのも
面白い。
京都にはそのような場所が他にもあるが(例えば夕顔の墓)、
新撰組の屯所となった八木家では、芹沢鴨が殺された部屋にその子孫の小学生が寝起きしていた(何年か前に聞いたことがあるが、現在どうなっているかは知らない)こともあり、ようやるなと思ったことを思い出した。
その後屯所となった前川家には、山南敬介などが切腹した部屋や古高俊太郎を拷問した部屋が現存していて、今でも人が暮らしているとのことである。