壊れゆく町家

元はどんな建物が建っていたか思い出せないが、
奥に松や燈篭があるところを見ると、何らかの町家が建っていた可能性が高い。

我が家がこんな惨状になるのは忍びないので、ある信託銀行に相談に行ったところ、
「資産活用」を勧められた。すなわち、京都の町中で町家を持っているくらいなら、
壊してマンションにしたほうがうんと儲かるというのである。彼らには
いかに効率よく儲けるかしか頭にないようである。
そこには文化や歴史を尊重するという発想はない。

そんなことはできないと抗う庶民に対して、心なしか憐れみと蔑みの眼差しが見えたように思うのは
時代遅れな人間の遠吠えかも知れない。

築90年の我が家は、一度壊したら二度と同じものは立てられないという思いから、
非効率・非経済的には目をつむり、何とか後世に引き継ぎたいと悪戦苦闘している。